【京都大学】学際融合教育研究推進センターの取り組み・シンポジウムのご案内(2013/06/11) 環境活動レポート

カーボン・オフセット付きメール便でCO2削減と被災地の復興支援事業のGREEN WORKSプロジェクト

環境活動レポート

【京都大学】学際融合教育研究推進センターの取り組み・シンポジウムのご案内(2013/06/11)

記者:橋本

今回は、京都大学学際融合教育研究推進センター様です。
実は直接GREEN WORKSへ「開催するシンポジウムについて、ぜひサイト上で学生の皆さまへご案内いただけないでしょうか?」というご依頼をいただき、実現しました。

残念ながら、直接訪問してお話を伺うことはできませんでしたが、お問い合わせいただいた京都大学学際融合教育研究推進センターの長谷川路子様に、いくつかの質問にご回答いただきました。

-----

①学際融合教育研究推進センターが行っている取り組みについて

 「学際」とは、簡単に言うと、いくつかの異なる学問分野がかかわり合うことです。そうした教育・研究を推進するため、学際融合教育研究推進センターは設立されました。センターの活動としては、学部や研究科の垣根を超えた教育・研究組織(ユニット)の設置、所属や立場に関係なく誰でも参加できる分野横断交流会の開催などがあります。分野横断交流会は、京都大学内外を問わず、本当に誰でも参加できますので、興味のある方は、ぜひどうぞ(学際融合教育研究推進センターHPはこちらよりご覧下さい)。
 「学際」は、近年重視されていますが、その背景は、学問の細分化が進んだことです。例えば、病院に行くと、内科、外科、耳鼻科、皮膚科、産婦人科、小児科など、細かく分かれていますよね。それどころか、内科が消化器内科と呼吸器内科に分かれていたり、外科が脳外科と心臓外科に分かれていたりすることも少なくないと思います。このように、診療科が細かく分けられるようになったことは、それぞれの臓器についてより詳しいことが分かってきたことの結果であり、良い事でもあります。しかし、私たち人間のからだは複雑で、病気の症状が現れる臓器と、病気の原因がある臓器が同じであるとは限りません。ですから、専門とする診療科以外の知識も少なからず持っていなければ、正確な診断を下せないことがあります。また、患者さんが診療科を転々と回らなければならないという問題もあります。そこで、注目されるようになったのが、総合診療ですね。バラエティーやドラマなどテレビ番組の題材にもなっています。
 ただ、「学際」と言うと、消化器内科と呼吸器内科というレベルではなく、文学と理学、法学と生物学など、もっと大きなスケールで異なる分野がかかわり合います。例えば、私は森里海連環学教育ユニットに所属しています。森里海連環学は、「森は海の恋人運動」に表されるような、森・川・里・海の連環を科学的に明らかにし、その知見に基づいた環境管理の手法を確立するために、提唱されました。さっきの病気の例と同じで、海の汚染の原因が海にあるとは限らないのです。その場合、海、川、森の研究をする人たちが協力して汚染の原因を突き止める必要があります。また、原因を突き止めても、それだけでは解決しません。解決するためには、そのための社会の仕組みが必要です。そこで、今度は、法律や経済などを研究する人たちと協力するのです。ということで、環境問題を解決するためには、実は、「学際」がとても重要なのです。

②今回開催するシンポジウムの概要について

 森里海連環学は、京都大学で提唱されました。だから京都が本拠地ですが、やはり一人でも多くの方に知ってもらい、役立ててもらわなければ、意味を成しません。そこで、今回、日本の首都・東京でシンポジウムを開催し、一人でも多くの方に森里海連環学を知ってもらうおうと、上京を決めました。”東京に出て成功するんだ!”と夢見る地方の少年・少女のようなものでしょうか。
 これから環境問題について学んだり、環境問題の解決に関わったりしたいと考えている高校生や大学生などの若い人たちや、現在進行形で環境問題の解決に携わっている老若男女に来てもらいたいです。行政や非営利団体だけではなく、今は、CSRという形で、あるいは、ビジネスを通じて、森・川・里・海の保全に携わっている企業も増えてきました。ですから、ビジネスマンにも来てもらいたいですね。はたまた、”環境問題なんて・・・”と思っている懐疑派の人に来てもらうのも、議論が盛り上がって面白いかもしれません。
 ”環境問題についてあまり知識がないから・・・”と心配される必要はありません。むしろ、真っ新な人ほど素直に森里海連環学を受け入れてもらえるかもしれませんし、”今回のシンポジウムが環境問題について学ぶきっかけとなってもらえたら”とも思います。もしも分かりづらかったら、聞く側だけではなく、話す側にも問題があるのです。”あの人、話が下手だった”と思ってください。
 森里海連環学が生まれたきっかけは、農業、林業、漁業など、自然を相手にしてきた方たちの経験にあります。京都大学主催だからと言って、身構える必要は全くありません。大切なのは自然と対話する力、自然を肌で感じる力です。難しい知識は、その後で良いのです。
 ちなみに、日経ビジネスオンラインで、基調講演をして下さる東京工業大学大学院の桑子敏雄教授と、分かりやすいニュース解説で人気の池上彰氏との対談記事を読むことができます。不安な方は、シンポジウムの予習がてら読んでみてください。おもしろい対談内容で、池上さんも「なるほど」「よくわかりました」とおっしゃっています。

③長谷川様が、学際融合教育研究推進センターで研究なさっていること、ユニットでの役割について

 今は、森里海を保全する1つの方法として、企業と農山漁村との交流活動に着目して研究を行っています。現在、環境保全、CSR、地域貢献、社員教育など、さまざまな名前のもとで、社員に森林や里山の整備をさせたり、河川や海岸の清掃をさせたり、農作業を体験させたりしている企業があります。中でも、1つの企業と1つの農山漁村が長期的な関係を築いていけるような仕組み・取り組みに大きな可能性を感じ、これまで自分が学んできた経済学や経営学に加えて、農学や生理学などの観点からもアプローチしています。
 ユニットでは、森里海連環学教育プログラムの運営や、今回のようなシンポジウムの開催を補助する仕事をしています。具体的には、教育プログラムのガイダンスで学生の疑問に答えたり、シンポジウムの広報をしたり、シンポジウムで展示するユニットのパネルを作成したり、ユニットのHPを更新したり、細々とした仕事をいろいろとやっています。

④長谷川様が環境について興味をもった・研究をしようと思ったきっかけ

 私が環境問題に興味を持ったのは、小学生の頃です。弱肉強食の世界で必死になって生きている野生動物が好きで、NHKの『生きもの地球紀行』などを、よく見ていました。その中で、人間の活動が原因で命を落としている野生動物が少なくないことを知り、”彼らには何の責任もないのに”と思いました。この流れで行けば、普通は、生物学に興味を持つのかもしれませんが、私は、顕微鏡でしか見えない世界や人体が苦手だったので、その道はやめました。中高生の頃、不動産のチラシに載っている家の図面を見るのが好きで、建築に興味を持ちました。そして、”建築士になって地球にやさしい街をつくろう”と思ったので、大学は、工学部の建築や家政学部の住居を目指していました。しかし、大学受験が思うようにいかず、家政学部で経済を学ぶことになりました。大学に入ってから、住居の授業を受ける機会にも恵まれましたが、自分には美的センスがないと悟り、建築の道はやめました。そんな矢先、環境経済学の存在を知り、”地球にやさしい街をつくるのにも、お金がかかる”と考え、経済学の観点から環境問題にアプローチする道を選びました。大学院に進学した頃は、”自分の興味や関心のある事を追究したい””民間企業が良い”という思いから、民間のシンクタンクを志望していました。私が入学した京都大学大学院地球環境学舎は、3か月以上のインターン研修が必須の、ちょっとユニークな大学院で、予行練習をかねて、民間のシンクタンクでインターン研修をしました。しかし、民間の場合、基本的に、お客さんがいないと仕事になりませんから、今ある社会の要望に応えることはできても、将来出てくるかもしれない潜在的な社会の要望に備えておくことは難しいことに気が付きました。そして、進路を考え直した時に、自分の興味や関心のある事を追究しつつ次の世代を育てられる大学の先生に魅力を感じ、博士課程に進学しました。今は、その夢を叶えるための途中です。

⑤長谷川様のように、将来環境関連の仕事に携わりたいと思っている高校生・大学生に向けたアドバイス

 行政、企業、教育機関、研究機関、非営利団体など、環境問題に関わる仕事にも、さまざまな形があります。そして、それぞれの特徴や長所・短所を知るとともに、自分はどういう形で環境問題に関わりたいのかを考えてください。
 ただ、私は、大学院で、企業の環境配慮行動が大学生の就職先の選択にどう影響しているのかという、ちょっと変わった研究をしていました。その中で、学生にインタビューをし、彼・彼女たちから教わったことですが、これからの時代、環境問題に関わる仕事は何か?と考えるのは、古いと思います。おそらく、どのような仕事にも何かしら環境問題との接点があるのだと思います。重要なのは、それを見つけられるかどうかだと思います。ですから、”環境問題に関する仕事がしたい”と思うのは、もちろん大切な事ですが、他にも、自分がしたい事や好きな事を探してみて下さい。そして、環境問題との間にどのようなつながりがあるのか、どのようなつながりを作ったら環境問題の解決に貢献できるかを考えてみて下さい。そうすれば、さまざまな仕事において、環境問題の解決に向けた取り組みが行われるようになり、特定の仕事においてのみ取り組みが行われるより、社会はずっと大きく前進するはずです。まだ誰も見つけていないつながりを見つける、そして、まだ誰もしていない事を実現するという意味で、独創性や自分の意志を貫く強さが求められるかもしれませんね。

-----

京都大学学際融合教育研究推進センターでの取り組み・シンポジウムのご案内から長谷川様ご自身のお話まで、盛りだくさんの内容でお届けしました。
ぜひ皆さまもシンポジウムに足を運び、森・川・里・海について改めて考えてみてはいかがでしょうか。

下記シンポジウムのご案内です。
※下部にございます「電子ファイル版レポート」より、シンポジウム案内のちらしをご覧いただけます。

*****

京都で生まれた森里海連環学が、東京へ進出します!
京都大学森里海連環学教育ユニットでは、森里海シンポジウム「人と自然のきずな~森里海連環学へのいざない~」を、下記の通り、開催いたします。
森、川、海、そして、人とのつながりを学び、自然をまもり、人をそだてる。
そんな森里海連環学の「学びの場」と「実践の場」からのメッセージをもとに、環境づくり、人づくりについて考えます。

日時:6月29日(土)13時~17時
場所:日本財団ビル(東京赤坂)2階大会議室
登壇者:桑子敏雄氏(東京工業大学大学院社会理工学研究科教授)、畠山信氏(NPO法人森は海の恋人副理事長)など

詳細、および、お申込みにつきましては、こちらをご覧ください。
なお、同会場1階ロビーにて、11時より、森・川・里・海の保全団体による活動紹介のパネル展示を同時開催いたしますので、是非そちらへも足をお運び下さい。

*****

京都大学学際融合教育研究推進センターの長谷川様、本当にありがとうございました。

フォトギャラリー

企業と農山漁村との交流

企業と農山漁村との交流

自然の中で学ぶ学生たち

自然の中で学ぶ学生たち

森里海シンポジウムちらし

page upもどる